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卵⼦凍結
卵⼦凍結とは、将来の妊娠に備え、専⾨の機器で卵⼦を凍結保存することです。
注射や内服薬で排卵誘発を⾏ない卵⼦を育て、⼗分な⼤きさになった所で採取します。その後、ガラス化保存法と呼ばれる⽅法で凍結保存します。
凍結保存した卵⼦は、必要となる時期が訪れたタイミングで融解し、顕微授精によって受精させ、⼥性の⼦宮へと受精卵を移植し、妊娠を⽬指していきます。
卵⼦凍結の適応
⽇本⽣殖医学会が2013年に公表したガイドラインには、卵⼦凍結できるケースが2つ掲載されています。それは「医学的適応」と「社会的適応」です。
医学的適応
限られた施設のみで実施が可能なため、当院では⾏っていません。
卵⼦凍結保存は、⽣殖器官をはじめとしたさまざまな⾝体の治療によって卵⼦が作られなくなる、または⽣殖機能が低くなる恐れのある⼥性が、治療を経た後にも妊娠することを実現する選択肢のひとつとなります。これを医学的適応と呼びます。
社会的適応
健康な未婚⼥性が将来の妊娠・出産に備えて事前に卵⼦を残しておくために卵⼦凍結を選択するケースを社会的適応と呼びます。⼥性の社会進出の進展、キャリアアップ、それにおける晩婚化が進⾏しているという社会的背景を受けて、「今は妊娠を望まないが、将来的に妊娠を希望した場合に備えて、若い頃の卵⼦を凍結保存させておく」というケースが多いです。
卵⼦の数
⼥性は⽣まれた時にはすでに⼀⽣分の卵⼦が卵巣内に存在しています。そのため、男性のようにその都度新しく体内で造られるわけではありません。
胎⽣期(お⺟さんのおなかの中で6ヶ⽉⽬くらい)は700万個、出産の際には約200万個もの原⼦卵胞が卵巣内に蓄えられています。その後、⽉経が開始されるまでに原⼦卵胞は⾃然と減少していき、思春期・⽣殖適齢期となる頃には20〜30万個まで減少しています。加齢などの要因で、卵⼦の質と量ともに年々低下していき、異常な卵⼦の割合も増加していきます。
卵巣内の卵子の様子
卵子数の変化
卵⼦を凍結した場合の妊娠率
卵⼦凍結を⾏った卵⼦で妊娠を⽬指す場合は、体外受精を⾏います。体外受精とは、体の外で卵⼦と精⼦を受精させ、受精卵を育てる⽅法です。
体外受精を⾏うにあたり、卵⼦を融解する過程で卵⼦が破損してしまうことがあります。この場合、破損した卵⼦は受精能⼒を失うため体外受精に使⽤することができません。そのため卵⼦凍結を⾏う場合は、複数個採卵しておくことを考える必要があります。
卵⼦凍結をした卵⼦を⽤いた妊娠率は、卵⼦凍結をおこなった年齢によって異なります。
年齢別 卵子凍結をした卵子を用いた妊娠率
採卵数と年齢別出産率(1名換算)
10個 | 20個 | 30個 | 40個 | |
ドナー卵子 (平均28歳) |
80% | 94% | ||
34歳 | 75% | 91% | 95% | |
37歳 | 53% | 75% | 87% | 92% |
40歳 | 30% | 52% | 65% | 76% |
42歳 | 21% | 36% | 49% | 60% |
44歳 | 7% | 15% | 21% | 26% |
出典:Human Reproduction vol.32 No.4,2017,p853-859
流産の可能性や卵⼦を融解する際に破損してしまう可能性を考慮すると、できるだけ早い段階で10個以上の卵⼦凍結を⾏うことが望ましいといえます。
しかし、⼀度に採卵するのは⾝体に負担が⼤きいため、何度かに分けて採卵することもあります。採卵できた卵⼦のうち将来解凍して妊娠可能な胚まで育つのはその2〜3割です。
表より、卵⼦凍結の理想の数の⽬安として、20代なら20個以上、30代前半なら30個以上が望ましい数と⾔われています。しかし、AMH値(卵巣予備能)によって卵⼦採取の数は変わってきます。AMHが低いほど1周期にとれる卵⼦の数は少なくなってきます。「今現在の可能なかぎりの最⼤個数をとる」という気持ちで臨みましょう。
卵⼦と妊娠の関係性
⽶国⽣殖医学会(ASRM)では、「凍結保存した卵⼦と新鮮な卵⼦を⽐較した際の受精率や出産率には差がない」ということが公表されています。
しかしながら、体外受精や顕微授精による妊娠率や出産率は⼥性の年齢とともに低下してしまうことが⼀般的です。これは、⾃然妊娠の場合であっても同様です。
妊娠のためには卵⼦の質ももちろんですが、⼥性⾃⾝の⾝体機能も⼤切です。
process for egg freezing
卵子凍結の実施方法
排卵誘発
効率的に卵⼦を採取するために、排卵誘発剤を使⽤して、複数の卵⼦を育てます。⼀⽅で、排卵誘発を使⽤せず、⾃然な⽉経周期の中で卵⼦の成⻑を待つ⽅法もあります。
採卵
卵子は卵胞の中で成長していきます。超音波で卵胞の位置を確認しながら針を刺し、卵胞液を吸引します。
凍結保存
卵⼦を凍結する⽅法では、「ガラス化法」が主流となっています。この⼿法は、卵⼦をガラス化(卵⼦内の液体部分が結晶構造とならずに流動性を失うこと)させて、急速凍結させます。
ガラス化法の⼿順
- 卵⼦を凍結保護剤に浸透させて、卵⼦と保護剤とを平衡化させる
- 凍結保護剤が浸透したら、卵⼦をガラス化液に⼊れて細胞の中の⽔を抜く
- 細胞内の⽔が抜かれた卵⼦をー196℃の液体窒素に投⼊して卵⼦を瞬時に凍結させる。急速に凍結することで、卵⼦が受けるダメージを軽減することが可能になります。
Age & term
凍結保存が可能な
年齢と保管期間
凍結保存が可能な年齢や保存期間医療機関によって異なる場合があります。
⽇本⽣殖医学会が公表するガイドラインでは
- 卵⼦を凍結保存できるのは成⼈した⼥性であること
- 卵⼦の採卵は40歳未満までに
- 凍結保存した卵⼦を体外受精などに⽤いる場合には45歳未満まで
と⽰されています。
また、⽇本産科婦⼈科学会からは
- 卵⼦の凍結保存期間は採卵した⼥性の⽣殖年齢を超えないこととする
と⾒解が⽰されています。
これらを踏まえると、卵⼦凍結保存が可能であるのは閉経が起こるまで、または45歳未満までという考え⽅が⼀般的であるということになります。
メリット
デメリット
卵⼦凍結は、将来的な妊娠に向けた選択肢を広げる重要な治療法です。
当院では、⼗分なカウンセリングと詳細な費⽤説明を通じ、各個⼈の状況に合わせた最適なプランをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。